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コラム

昆虫王国への招待状
−大間々はオオムラサキの里−

世界中で現在までに記録された昆虫の種類は80万種に上り、この数は地球上の全生物の4分の3にあたるといわれます。まさに地球は虫の惑星であり、昆虫たちの天国といえるでしょう。
今年の夏のコノドント館は、この奥深い迷宮『昆虫王国』へ誘う招待状を皆さんにお贈りすることになりました。

<冷蔵庫で眠っていた蝶>
コノドント館では、4千点もの日本や世界各地の珍しい『チョウやカブトムシ』を紹介しようと準備を進めていました。そんななかで、蝶の展示についての打ち合わせのため、前橋市に在住の阿部勝次さんの仕事場見伺ったときのことです。
「ぜひ、生きたオオムラサキをじっくり見てください」と言って立ち上がった阿部さんは、何と冷蔵庫から、捕虫網に入ったままの大きな蝶を取り出してきました。庭に出て太陽の光を当てると、まるで恒星間航行で冷凍睡眠から目覚めた宇宙飛行士のように、初めは血行を良くしようと激しく羽ばたいていましたが、次第に落ち着いてきて、しばらくすると傷ひとつない美しい羽の表面を見せてくれました。うながされるまま周囲からよく観察したところ、斜め前方から見たときが、名前の由来となった青紫が金属光沢を放って輝き、最も美しく見えました。

世界に誇る華麗な姿>

『オオムラサキ』はタテハチョウの仲間で最も大型で、日本などアジア東部の特産種です。貫禄さえも漂う美しい姿からでしょうか、昭和32年に日本昆虫学会で『国蝶』とされ、75円の通常切手にもなったことで知られています。この日本が世界に誇る華麗な蝶も、押し寄せる開発の波には抗しきれず、場所によっては絶滅に近い状態になっているようです。

この貴重な蝶の群馬県内における数少ない生息地が、大間々の周辺一帯であることは一部の方以外にはあまり知られていません。私が知ったのも、つい2年ほど前のことで、ある自然観察会で阿部さんたちと同行した時からでした。
「いわば大間々周辺の山地は、オオムラサキの里といってもよい所なんですね」という問い掛けに、阿部さんは大きくうなずきながら、次のように答えてくれました。
「ええ、間違いではありません。調査と保護のため、大間々にも仲間の皆さんと何回も来ていますが、長尾根の熊野神社の辺りをはじめ、個体数が特に多い場所のあることを確認しています。あの辺りは幼虫の食樹のエノキがたくさん生えているほか、蝶になってからのオオムラサキが好む樹液を出すクヌギも多いんですよ」。
「最近ホタルの里があちこちに作られているようですけれど、『オオムラサキの森』みたいなものができて、だれでも気軽にオオムラサキの姿が見られると良いですね」と話を向けると、阿部さんは「それは私も考えていることなんです。自然の森にあるエノキやクヌギといった木を残すなどオオムラサキの成育環境を守ってやればよいことですから、地元の人たちが少し力を合わせればできることですよ。埼玉県の嵐山町にありますけれど、まだ群馬にはどこにもないから、早い者勝ちですよ」と言われました。

今回ご協力をいただいたオオムラサキの会の皆さんは、蝶の素晴らしさを知ってもらい、さらに自然の大切さを肌で感じてもらうことを究極の目的としているそうです。そして、そのためには機会あるごとに会員のコレクションを展示に活用し、理解を深めるために役立てたいと考えています。
色落ちしやすくデリケートな蝶の標本を、長期公開するのは決心のいることだと思います。しかし、夏休み中の子供たちや家族の方にとっては本当にうれしいことでしょう。こうした小さな働きかけが積み重なり、いつの日か地球環境保全への大きなうねりとなって帰ってきてくれるかもしれません。

Script:竹内/広報おおままNo.224(平成4年7月)




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