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学芸論文

上毛新聞「視点 オピニオン21」より 

『美術館の役割(6) 「作品の故郷」へ敬意も』

 富弘美術館 館長 聖生清重
 

  「地域における文化・芸術活動は、地域が抱える諸課題に対する“総合的な処方箋”であり、地域活性化の“起爆剤”となりえる」

 財団法人地域創造が2年半前にとりまとめた「地域における文化・芸術活動の行政効果」の一文です。同報告書は、また、文化・芸術の役割について「地域の安心・安全に始まり、福祉や教育、観光・商工、地域の環境、地域・コミュニティまで、実に幅広い行政分野に及んでいる」と指摘しています。

 この報告書を手元において、時々、目を通すのが習慣になっています。それは、富弘美術館があるみどり市東町の人口減少が止まらず、年々過疎が進行して「限界集落」の恐れが強まりつつあるからです。

 この現実に対して富弘美術館として、何か、できることはないのか。もとより、人口減対策は、ひとつの美術館だけで担えるものではありません。それでも、何か、できることはないのか、とくだんの報告書を読みながら自問するのが常になっています。

 交流人口の増加は、ひとつの回答です。全国から、大勢の来館者を迎えることができれば、そこには人と人との交流が生まれ、経済効果ももたらされます。来館者を、さらに増やすことが、富弘美術館にとっての大きな役割であり、最大限、努力しなければいけないと思っています。

 富弘作品の展示に加えて、教育、生涯学習、詩画芸術の普及などにももっと力を入れる必要があります。地域住民が、その存在を誇らしく思える美術館づくりにも努めなければなりません。

 しかし、それだけでよいのか。「人口減に悩む地域に対して、何か貢献できることはないのか」との自問が付きまといます。

 しかも、人口減への対応を考えることは、富弘美術館の未来を考えることでもあると思っています。何故なら、富弘作品は、富弘美術館が建つ東町(旧東村)の風土と1946(昭和21))年生まれの“富弘少年”の生活体験から生まれたものが少なくないからです。

 戦後で貧しかったものの、家族愛にあふれ、地域の絆も強かった時代への郷愁かも知れません。しかし、ことは富弘作品を展示する富弘美術館の「作品の故郷」に対する敬意の問題でもあるのです。作品とその故郷への敬意なくして美術館の未来は描けません。      

 人口減少時代での美術館の役割を考えることは、過疎化が全国いたるところで進行している状況にかんがみれば、富弘美術館だけの課題ではないと言えます。

 自問への名回答は、おそらく見つからないでしょう。でも、「報告書」を参考に考えることは続けたいと思っています。

 

 

2014年9月27日 上毛新聞『視点 オピニオン21』掲載

 

 

 

2014年 12月 26日更新

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