子育てがアツいまち|2025年12月号

特集「子育てがアツいまち」

子育ての喜びと戸惑い
親にとって、子どもの笑顔や成長は何よりもうれしいもの。子どもの何気ない仕草や小さないたずら、安らかなその寝顔。かわいい我が子の存在が、毎日を喜びと感動に溢れたかけがえのない日々にしてくれる。
その一方で、思い通りにいかない焦りや迷い、一人で何とかしないといけないという孤独…。子育ては、うれしさと同じくらい不安や戸惑いの連続でもある。
子育て環境の変化
近年、子育てを巡る環境はめまぐるしい勢いで変化している。厚生労働省の調査(※)によると、過去20年間で核家族世帯は74.2%から86.4%へ増加。児童のいる世帯で働く母の割合も56.7%から80.9%へと増加し、初めて8割を超えた。祖父母と同居せず、共働きで子育てする世帯が大半を占める。仕事と育児の両立に不安があると感じる若年層は7割を超える。
※ 出典(厚生労働省)
子育てと「孤(こ)育て」
子育ての喜びを日々実感するはずが、日々の忙しさの中で子どもとじっくり向き合えず、地域とのつながりも希薄化する中で孤立感や育児不安などにとらわれ、子育てを一人で抱え込む「弧育て」が社会問題になりつつある。家族のかたちや働き方が多様化する今、「子育ては家庭だけで担うもの」という考え方は、すでに限界を迎えているのかもしれない。少子化が進む中で、地域は子育てにどう関わることができるのか。
みどり市が子育て支援策を充実させる一方で、「自分にも何かできることはないか」と動き出した地域の人たち。今号では、それぞれの立場でできることを持ち寄り、つながり合いながら子育てに向き合う「みどり市の子育ての今」を特集する。
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全国トップを目指す、みどり市の子育て支援
経済的な支援で子どもの成長を応援
令和6年6月、こども未来基金を設置してから、みどり市の子育て支援は大きく進化している。ボートレース桐生の収益金を原資に、みどり市ならではの切れ目のない子育て支援を展開することで、安心して子どもを産み育てることができる環境を整備し、市を挙げて未来を担う子どもたちの成長を応援している。
保育料・給食費の完全無償化
子育て世帯の経済的な負担を軽減するため、本年度から群馬県内12市初の取り組みとして、0~5歳児の保育料と給食費の無償化に踏み切った。
「第一子から」「保護者の所得制限なし」で受けられるのがみどり市の強みで、子ども1人当たり約143万円の経済支援となり、子育て世帯の大きな安心につながっている。
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学校体育館にエアコンを設置
子どもたちの学ぶ環境の整備も着実に進んでいる。「こどもみらいミーティング」で小・中学生から出た意見も踏まえ、2025年9月、市内小・中学校の全体育館へのエアコン整備が完了した。猛暑が深刻化する夏場の熱中症などを未然に防ぎ、授業や行事が安心して行える環境を整えた。
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夢未来奨学金
夢を持つ子どもを後押しするため、返済の必要がない給付型の奨学金制度「夢未来奨学金」もスタートした。学業やスポーツ、文化芸術などの分野において強い向上心を持つ学生に対し、1人当たり年間最大100万円を給付する。貸与型の奨学金については、市内に住んで就職することなどを条件に、返還が免除となる制度を新設した。
子ども自身の意思で進路を選べるよう、経済的な支援を通じて夢を応援している。
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結婚・出産のサポート
さらに、本年度からは子育ての前段である「結婚」も支援の対象に加えた。婚活イベントで出会いの機会を提供するとともに、経済的な事情から結婚に踏み切れない未婚男女を後押しするため、新婚生活にかかる住居費を補助する制度を新設した。
妊娠・出産期の支援では、不妊治療費の助成もこれまでより充実している。従来は自己負担額の2分の1補助(上限20万円)であったが、本年度からは全額補助(同上限)へと拡充した。子どもを望む人の力に少しでもなれるよう、治療にかかる経済的負担を和らげている。
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近隣からも羨望のまなざしを向けられようになった、みどり市の子育て支援。しかしながら、経済的な支援のみで子育ての不安が全て解消されるわけではない。子育ての中で日々感じる不安や戸惑い、孤独感。それらが消える特効薬はないのかもしれない。ただ、どう向き合っていったらよいかを学ぶことはできる。
子育てを経験してきた先輩たちは、家庭でも職場でもない新たな居場所をつくり、訪れた人を笑顔で迎え入れ、子育ての不安との付き合い方をやさしく教えてくれている。
ひととき羽を休める居場所

2025年で活動10年目を迎える「とまり木」。こども食堂という言葉がまだ一般に知られていない当時から活動し、立ち寄った人があたたかくつながれる場所を目指してきた。
多様なバックグラウンドを持つ人を誰でも受け入れ、自由に過ごせる居場所を提供している。
みんなで囲む食事会



代表の山同善子さん自身も子育て経験者。「みんな毎日一生懸命子育てをしているんだから、たまには夕飯を作らず、子どもとゆっくりご飯を食べて、帰って寝るだけの日があってもいいよね」。自身も子育て中は精いっぱいだった経験から、現役の子育て世代を応援し、地域に同じ想いの人が少しでも増えることを目指している。
毎月第3金曜日に開かれる食事会では、子どもだけでなく保護者やスタッフも一緒に食卓を囲む。ご飯を食べているうちに自然と会話が生まれ、笑顔がこぼれる。約1年前から参加している小学5年生の娘を持つ保護者の植木さんは「回数を重ねるうちに、日頃から連絡を取り合う友達や、食事会の時だけの緩いつながりの友達もできた。どちらも居心地がよく、親子共に楽しく過ごせる場所になっている」と話す。子どもだけでなく、保護者や地域スタッフとの間に新たな交流が生まれている。
どんな理由であれ、ここは誰でも立ち寄れる場所であり、ひととき羽を休めることができる、地域のとまり木になっている。

さまざまな関わり

活動を支えるのは、地域の大人たちのさまざまな関わりだ。作った野菜を届けてくれる人。食材を運んでくれる人。洗い物を手伝ってくれる人。子どもの話を聞いてくれる人。保育士や栄養士、主任児童委員など多様な肩書きを持つ30人強のメンバーは、みんな自身の子育て経験における後悔を振り返りながら、決して無理せず、ヘトヘトにならない方法を模索しながら活動を継続している。コロナ禍には食事会が開けない中、メンバーが学校に出向いて調理し、子どもたちにお弁当として配布する出前方式で継続した。
こうした活動が評価され、令和5年度には家庭教育支援チームとして文部科学大臣表彰を受賞した。

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地域に根付かせたい文化
活動が始まって10年。次の世代にどうつなぐかが今の課題だという。一部の活動には高校生の参加も促している。「活動の形は変わっても構わない。『いろんな人が君のことをちゃんと見ているよ』『応援してくれる人がいるから頑張ってね』というメッセージを子どもたちに届けたい」と山同さんは語る。
とまり木が目指すのは、この地域に子どもを見守る文化を根付かせること。活動に終わりはない。

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顔の見えるつながりが、いざという時の支えに

「Flat~ふらっと~」が目指すのは、子育て支援ではなく「お母さん支援」。子育て中のママさんたちが日常の悩みや不安を話せる場として、さまざまな場で活動している。
日常の小さな希望

保育士としての勤務経験がある代表の山崎雅美さんは、当時仕事が忙しく、自分の子どもをないがしろにしてしまった反省から、自宅でも無理なくできることを考えて平成31年に活動をスタートした。かつての自分がそうだったように、日常の小さな希望を叶えることで保護者の心に余裕が生まれ、それが子どもとの関わりにも良い影響をもたらすと考えている。だからこそ、お母さんの「ちょっとやりたい」を形にする支援を大切にしている。
手頃な価格でマッサージやネイルを楽しめる機会や、親子で楽しめるイベントを企画。自分で全てやるのではなく、やりたいという希望を実現できる人につなぐ。そのつながりが広がり、どんどん輪になっていく。現在では、市内の複数の小学校の一角を間借りして活動するようになった。


心をフラットに

山崎さんは「普段から遊んだりおしゃべりしたりして、いざ悩みがあった時に『そういえばFlatがあったな』と思い出してもらえる関係性を築きたい」と話す。「私、つらいんだなと感じた時点ではもう遅いこともある。こんなことで行っていいのかな程度の軽い気持ちで遊びに来てもらえれば十分。気付かないうちに少し楽になって息抜きしてもらえたら、それが一番うれしい」と話す。

普段は付き合いがない相手だからこそ、素直に話せることもある。「相談するぞ」と意気込まなくても、お茶を飲んだりマッサージやネイルを楽しんだりする中で、「実はね…」と自然に相談が始まる。ふらっと立ち寄って心をフラット(平穏)にできる、そんな心が緩む場所であり続けたいと語った。
2025年4月にはNPOの認証を受け、学習支援として放課後Flatの活動もスタートした。今後はお父さん支援として、パパさんたちの話し合いの場を設けることも視野に入れる。
Flatのようなつながりの輪を必要としている子育て世代は多い。活動はまだ始まったばかりだ。

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若い世代の参加

子育てをサポートするつながりの輪は、若い世代にも広がっている。小・中学生の夏休みの宿題を手伝う「こうみんかんdeスタディ」で学習ボランティアを務めるのは、地元の高校生や大学生。中学生の時に友達とよく公民館を利用していた石島さんと藤田さんは、公民館職員から声をかけられたのがきっかけでボランティアに興味を持った。「教える」というより「一緒に考えて楽しむ」スタイルで、高校生になった今では夏休みに学習ボランティアとして活動している。
いきなりボランティアに挑戦するのはハードルが高いが、日頃から公民館とのつながりがあったことで、その一歩はぐっと身近なものになったのかもしれない。
こうして、地域で育ち、また地域に関わる循環が少しずつ生まれている。
部活動を通じて地域に恩返ししたい

子育てをめぐる地域のつながりの輪は、教育の現場にも広がっている。部活動の地域展開もその一つだ。教員の部活動指導の負担が課題になる中、地域展開は生徒のニーズに応え、豊かなスポーツ・芸術活動を実現することができる。その受け皿として、市内でも徐々に部活動指導員の採用が広がっている。
部活動の地域展開

笠懸中学校の女子バレーボール部を指導する北向孝慈さんは、かつて春高バレーにも出場したことのある競技経験者。監督を務めた社会人バレー部では20回も県大会を制し、長年クラブチームを全国大会に導いてきた実力者だ。2年前にヤングの部(12~15歳が対象)のクラブチームを市内で創部し、その指導経験が買われて部活動を指導することとなった。クラブチームでは競技レベルの向上を目標に時に厳しく指導する一方、部活動では競技の楽しさを知ってもらうことを第一に考えている。2025年からは大間々中学校との合同チームとなり、団体行動を学んでもらうことも大切にしている。

平日は仕事が終わり次第、週3日クラブチームを指導し、週末も練習や試合で予定が埋まる多忙の中、週1回の部活動の指導を引き受けたのは「恩返ししたい」という想いからだ。「バレーボールが自分という人間を育ててくれたから、今度はバレーボールを通じて自分が地域に恩返ししたい」。
競技経験が豊富な北向さんのネットワークを活用し、2025年10月には県内の強豪校やクラブチームなど9チームが試合する交流会も初開催した。最近では、部活動の大会にクラブチームが参加できる枠も広がっている。
競技レベルの向上と、幅広い交流の中で生徒が健やかに成長できることを願って、今後も部活動の地域連携は進んでいく。

子育て応援団の輪
みどり市では、子育て中のストレスを少しでも和らげ、家庭や地域での子どもとの関わりを支える取り組みとして、平成29年度に「ほめて育てるコミュニケーショントレーニング(ほめトレ)」を導入した。
夫婦で参加した眉丈山さん夫婦。「少人数だったからこそ気負わず、リアルな悩みを話せた。先生から『かんしゃくはあって当たり前、みんな通る道だよ』と言ってもらえてほっとした」と話す。夫婦で参加したことで「夫だと、こういう時にこんなふうに子どもへ言葉をかけるんだ」と新しい発見もあった。
受講者は、学んだ内容を自分の子どもとの関わりに生かすだけでなく、地域で困っている家庭を見かけたときに「子育て応援団」としてサポートしている。

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厚く、熱く、もっとアツいまちへ
みどり市の子育て支援の強みは、制度の厚みに加え、子育てを支える人の層の「厚さ」だ。――声をかける人、見守る人、寄り添う人。それぞれの想いが重なって、このまちのあたたかさを形作っている。
そして、もう一つの強みが「熱さ」。子どもたちや子育てしている人を応援したいという、まっすぐな気持ち。親を支えたい、地域でサポートしたいという情熱。その一人一人の想いが、このまちの子育てをもっとあたたかく、アツくしている。
「おはよう」「頑張ってね」。その一言だって、立派な子育て支援。誰もがちょっとした関わりからこの輪に加わることができる。まちのあちこちに、子どもを思うやさしいまなざしがある。そのぬくもりが、子育ての原動力。小さな関わりがつながりとなり、地域の子育て文化をつくっていく。
これからも、地域と行政がそれぞれの持ち場でできることを積み重ねながら、層の厚さと想いの熱さで「子育てがアツいまち、みどり市」を育てていきたい。

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